山口晴久 Haruhisa Yamaguchi:
何百とある作品の中で、「鷺娘」は三下りのしっとりとした調子の荘重で凄艶な長唄の変化物の名作である。
雪の降る暗い中、白無垢の衣裳で鳥足を見せながら舞台を歩き回り、時には鳥の羽ばたきを見せる。 舞台が明るくなると同時に、白無垢は引き抜かれ(ぶっ返り)町娘の姿になり、クドキが始まり、迷いの心の執念に終始する。やがてチラシに入ると曲調も急テンポになり、肌ぬぎし、吹雪の中でセメになり、次第に弱まる羽ばたきで息も絶え絶えになって終わる。 雪のシーンは幕開きと最後のシーン(チラシ)だけだが、あえて雪のシーンを強調したかった。 |